枯らし熟成焼肉つついの魅力 熟成肉の知識と楽しみ方

京都の焼肉文化を支える職人たち——こだわりの生産者を訪ねて

焼肉を食べるとき、「このお肉はどこから来ているのか?」と考えたことはありますか?美味しい焼肉を提供するためには、優れた目利きが必要です。どんなに素晴らしい料理人でも、素材が良くなければ最高の味は引き出せません。特に焼肉は、肉の質がダイレクトに味を左右するため、仕入れの段階が非常に重要になってきます。今回は、焼肉つついの肉の目利きをお願いしている「永井さん」のこだわりをお伝えしたいと思います。彼は長年、京都で肉の仕入れを行い、「本当に美味しい肉」を見極め続けてきた職人です。

枯らし熟成という伝統技法

枯らし熟成とは、牛を屠畜したあとに一定期間、骨付きのまま吊るして熟成させる技法です。現代では、時間やコストの関係でこの方法を取り入れている精肉店は少なくなりました。しかし、昔は町の肉屋なら当たり前に行われていた方法だったそうです。

永井さんは「特別なことをしているつもりはない」と言いますが、実際にこの技法を守り続けている肉屋は全国でもごくわずか。枯らし熟成によって水分が適度に抜け、肉の旨味が凝縮されます。加えて、筋肉の繊維がほぐれ、食感も柔らかくなるのです。「やっぱりお前のとこが一番美味い」と言ってもらえる肉を提供すること。それが永井さんの商売哲学です。

熟成の工程と現代の肉流通

お湯をかけた真空パックはナイロンが縮み硬くなる

一般的にスーパーや飲食店で流通する牛肉の多くは、屠畜後すぐに真空パックされます。真空にすることで肉の酸化を防ぎ、見た目を保つことができますが、熟成という点では大きな違いが出てきます。真空パックの工程では、肉をナイロンに包み、熱湯をかけて密閉する方法が取られることが多いそうです。これによりパックの耐久性が増し、輸送時のロスを減らせますが、一方で湯をかけることで発酵や熟成が進みにくくなります。

お湯をかけていない真空パック。ナイロンが縮んでいない

「真空パックをしているからといって、必ずしも熟成されているとは限らない」と永井さん。真の熟成とは、時間と手間を惜しまずに行うもの。だからこそ、枯らし熟成にこだわる精肉店は年々少なくなっているのが現状です。

熟成に最適な期間と肉の変化

永井氏の冷蔵庫には湯をかけていない真空パックの肉が並ぶ

枯らし熟成では、屠畜後まず2週間ほど骨付きのまま吊るしておきます。その後、部位ごとに切り分けて処理を進め、さらに真空状態で熟成させていきます。この工程を経ることで、肉は程よく脱水され、旨味が凝縮。繊維がほどけ、柔らかくなり、最高の状態になります。一般的な精肉店では、この工程を省略し、できるだけ早く市場に流すケースが多いのですが、本当に美味しい肉は「待つ時間」が必要なのです。

また、熟成には牛の種類も影響します。永井さんの肉屋では、去勢牛ではなく雌牛にこだわっています。雄牛は筋肉が発達しており、どうしても繊維が粗くなりがちですが、雌牛は筋繊維が細かく、柔らかさが際立つのが特徴です。「見栄えのいいサシ(霜降り)」が評価されることが多い中、永井さんは食べたときの口どけや旨味を最優先に考えています。焼肉つついでも、そんな永井さんの目利きによって選ばれた、極上の雌牛の肉だけを使用しています。

本当に美味しい肉をお届けするために

永井氏の扱う肉はすべて雌牛。去勢牛とは繊維のキメの細かさが違う

焼肉つついでは、単に高級な肉を仕入れるのではなく、「お客様にとって本当に美味しい肉とは何か?」を考えながら仕入れを行っています。永井さんのような職人が手間を惜しまず仕上げた肉は、食べた瞬間に違いがわかります。じんわりと広がる旨味、舌の上でとろける食感、噛むほどにあふれる肉汁。そのすべてが、熟成という工程を経たからこそ生まれる味わいです。

「焼肉は焼き方が大事」とよく言われますが、それ以前に大切なのは、どんな肉を焼くのかということ。素材の良さが、焼肉の美味しさを決めるのです。当店では、お客様に最高の状態で味わっていただくために、提供する肉のカットにもこだわっています。すべて手切りで、一枚一枚丁寧に仕上げ、焼いたときに最も美味しくなるよう調整しています。

まとめ

肉の美味しさは、育てる生産者、選ぶ目利き、提供する料理人が一体となって生まれます。永井さんのような職人のこだわりがあるからこそ、焼肉つついでは最高の焼肉体験をお届けできるのです。「焼肉が好き」と言ってくださる方にこそ、一度、枯らし熟成肉の本当の美味しさを味わっていただきたいと思っています。

ぜひ、お店でその違いを感じてみてください。

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